ゲーミングPCを快適かつ安全に使い続けるためには、電源トラブルへの備えが欠かせません。特に突然の停電や落雷といった予期せぬ事態に対応する手段として注目されているのが、UPS(無停電電源装置)です。しかし、UPSの導入はすべてのユーザーにとって必須というわけではなく、その必要性を正しく判断するためには、機能や特徴をよく理解しておくことが重要です。
この記事では、ゲーミングPCとUPSの関係性を中心に、導入によるメリットとデメリットをわかりやすく整理しながら、UPSの選び方やおすすめ製品についても紹介していきます。初めてUPSを検討する方でも迷わず選べるよう、実用的な情報をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
- UPSの基本的な仕組みと種類がわかる
- ゲーミングPCにUPSが必要な理由が理解できる
- 導入時のメリットとデメリットを把握できる
- 自分に合ったUPSの選び方とおすすめ機種を知ることができる
ゲーミングPCにUPSは必要なのか?

- UPSとは何か?基礎から解説
- ゲーミングPCとUPSの関係性
- UPS導入の主なメリットとは
- UPSを導入する際のデメリット
- 落雷や停電からPCを守る理由
UPSとは何か?基礎から解説
UPSとは「Uninterruptible Power Supply(無停電電源装置)」の略称で、突然の停電や電力トラブルが起きた際に、接続されている機器へ一時的に電力を供給する装置です。
通常は家庭用のコンセントから電気を供給しますが、異常が起きると内蔵されたバッテリーに切り替わり、数分から十数分の間、PCなどに電力を供給できる仕組みになっています。この短時間の電力供給が、作業中のデータ保存や安全なシャットダウンのために非常に役立ちます。
また、UPSの種類には「常時商用給電方式」「ラインインタラクティブ方式」「常時インバーター方式」があり、それぞれ性能や価格帯が異なります。例えば、常時インバーター方式は瞬断が起きない高性能モデルですが、価格が高めである点は注意が必要です。
一般家庭や個人使用では、コストと性能のバランスが良い「ラインインタラクティブ方式」がよく選ばれています。UPSはあくまで“緊急対応用の電源”であり、長時間のバックアップには不向きですが、突然の電力遮断から機器やデータを守る役割を果たしてくれます。
ゲーミングPCとUPSの関係性
ゲーミングPCは高性能な部品を多数搭載しており、そのぶん消費電力も大きくなりがちです。そのため、停電や落雷といったトラブルが発生した際の影響も大きく、UPSがあることでそのリスクを軽減できます。
例えば、ゲームプレイ中に突然停電が起きると、進行中のデータが消えてしまうだけでなく、最悪の場合、PC自体が故障する可能性もあります。特にHDD搭載機では、電源が瞬間的に切れることで物理的な損傷が発生することもあるのです。
さらに、オンライン対戦ゲーム(PvP)においては、回線が落ちると自動的にペナルティが科されることがあります。これはプレイヤーの故意・過失に関係なく適用されるため、予期せぬ停電であっても影響は避けられません。UPSを使えば、このような「途中離脱」を防ぐことにもつながります。
このように、ゲーミングPCにおけるUPSの役割は「一時的な電源確保」だけでなく、「トラブルによるダメージの最小化」や「プレイ環境の安定化」にも及びます。安全かつ快適にゲームを楽しみたい方にとって、UPSは有効な投資と言えるでしょう。
UPS導入の主なメリットとは
UPSを導入するメリットは、主に「停電時のリスク回避」と「PC機器の保護」が挙げられます。特にゲーミングPCのように高性能かつ高価なパソコンを使用している場合、その価値はさらに高まります。
最もわかりやすい利点は、突然の停電でも電力が瞬時にバッテリーへ切り替わり、PCがすぐに落ちるのを防いでくれることです。これにより、ゲーム中のデータ破損やシステム障害を回避できるようになります。とくにHDDを搭載している場合、急な電源断で物理的な損傷が起きるケースもあるため、UPSは有効な対策となります。
また、UPSには雷サージ(雷による過電圧)を吸収する機能があるモデルもあります。これによって、落雷によるマザーボードや電源ユニットの損傷も防ぐことが可能です。こうしたサージ保護機能は、通常の延長コードや電源タップではカバーしきれない部分もあります。
さらに、オンラインゲームをプレイしている場合、回線落ちによるペナルティを避けられる点も見逃せません。PvP中に電源が切れて接続が失われると、ゲーム内でレートが下がったり、一定時間マッチングができなくなったりすることがあります。UPSがあれば、そのような損失も未然に防げます。
このようにUPSの導入は、「時間的余裕」と「安心感」をユーザーにもたらし、結果としてトラブルを大きく減らす手段になるのです。
UPSを導入する際のデメリット
一方で、UPSの導入にはいくつかのデメリットや注意点もあります。コストと運用面の負担が、その主な要因です。
まず第一に、UPS自体が安価ではありません。正弦波出力で高性能なモデルほど価格は上がり、ゲーミングPCに対応できる機種となると1万円~5万円前後の出費を覚悟する必要があります。これに加えて、数年おきのバッテリー交換も発生するため、長期的に見ればランニングコストも無視できません。
さらに、UPSは本体がそれなりに大きく重たい機器です。設置スペースが限られている環境では、置き場所に困る場合があります。また、通気性が悪い場所に設置すると、内部バッテリーの寿命を縮める原因にもなります。
加えて、UPSの給電時間は限られている点にも注意が必要です。多くの家庭用UPSは数分~十数分程度のバックアップしか行えません。つまり、長時間作業を続けられるわけではなく、あくまでもシャットダウンやデータ保存のための“猶予時間”に過ぎません。
前述の通り、矩形波タイプのUPSは安価で導入しやすい反面、ゲーミングPCのようなActive PFC搭載電源ユニットに対応していないこともあります。使用しているPCとの相性を事前に確認しないと、いざというとき動作しないリスクもあるのです。
これらの点から、UPSは「誰にでも必要な機器」ではないことがわかります。使用環境や予算、PCのスペックを踏まえた上で、慎重に導入を検討することが求められます。
落雷や停電からPCを守る理由

パソコンは精密な電子機器であるため、落雷や停電などの突発的な電力トラブルに非常に弱いという特徴があります。とくにゲーミングPCのように高性能で高価なパーツを多数搭載している場合、その被害はより深刻なものになりがちです。
落雷による被害で最も多いのが「雷サージ」と呼ばれる過電圧です。これは雷が近くに落ちたとき、電線や通信ケーブルに一時的に非常に高い電圧が流れる現象で、直接落雷しなくてもコンセントを通じてPCへダメージを与える可能性があります。結果として、マザーボードや電源ユニット、さらには接続していたモニターやルーターまで壊れてしまうこともあります。
また、停電によって引き起こされるリスクも無視できません。突然電源が切れると、作業中のファイルが保存できなくなるだけでなく、システムファイルが破損する可能性もあります。特にHDDを搭載しているPCでは、読み書きの途中で電源が切れると、ディスク自体が物理的に損傷するリスクがあるのです。
このような事態を防ぐために、UPSのようなバックアップ電源や、サージ保護機能付きの電源タップが有効です。UPSであれば、停電時に数分間の電力を確保できるため、その間にデータ保存や安全なシャットダウンが可能になります。また、雷サージ保護付きUPSを選べば、落雷による高電圧からも機器を守れます。
つまり、PCを安全に使い続けるためには、落雷や停電といった予期せぬ電源トラブルへの備えが欠かせません。それが、大切なデータと機器の寿命を守るための第一歩になります。
ゲーミングPCにUPSは必要か迷う人向けガイド

- ゲーミングPC向けUPSの選び方
- UPSの出力容量とPCスペックの関係
- 正弦波と矩形波の違いとは
- ゲーミングPCにおすすめのUPS3選
- UPS導入と同時にすべきバックアップ習慣
ゲーミングPC向けUPSの選び方
ゲーミングPCに最適なUPSを選ぶには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。用途や環境に応じた選定を行わないと、UPSを導入しても十分に効果を発揮できません。
まず確認すべきなのは「給電方式」です。UPSには大きく分けて3つの給電方式がありますが、ゲーミングPCで使うなら「ラインインタラクティブ方式」か「常時インバーター方式」が適しています。とくにラインインタラクティブ方式は、安定した電圧供給ができるうえ、価格と性能のバランスが良く、家庭用としても人気があります。
次に注目したいのが「出力波形」です。出力波形には正弦波と矩形波がありますが、Active PFC電源を搭載したゲーミングPCでは、矩形波のUPSでは正常に動作しないことがあります。そのため、正弦波出力のモデルを選んだほうが安心です。
また、設置スペースや接続機器の数にも注目しましょう。UPS本体が大きすぎるとデスク周りを圧迫しますし、接続口が足りなければ他の周辺機器が保護できなくなります。USBポートや液晶表示の有無も、使用感を左右する要素です。
最後に、バッテリー交換が可能かどうか、そして製品の保証期間も確認しておくとよいでしょう。長期的な運用を見込む場合、メンテナンス性の高さは大きなメリットになります。
このように、ゲーミングPCに合ったUPSを選ぶためには、価格だけでなく、給電方式・波形・容量・機能性まで含めて総合的に判断することが大切です。
UPSの出力容量とPCスペックの関係
UPSを導入する際、PCに必要な「出力容量(W)」を正しく見積もることは非常に重要です。容量が足りないUPSを使うと、停電時に機器がすぐにシャットダウンしたり、最悪の場合UPS自体が動作しない可能性があります。
ゲーミングPCは一般的なビジネスPCに比べて高性能なCPU・GPU・電源ユニットを搭載しているため、消費電力も高くなる傾向にあります。例えば、グラフィックボードを搭載したミドルクラスのゲーミングPCであれば、アイドル時でも200〜300W、ゲームプレイ中には500Wを超えることも珍しくありません。
このため、出力容量300W程度のUPSでは力不足になるケースがあります。少なくとも500W以上の出力に対応しているUPSを選んでおくと、ある程度の余裕を持って運用できます。また、PCだけでなく、モニターやルーターも同時に接続する場合は、それらの消費電力も加味してトータルで必要な容量を算出する必要があります。
ここで注意したいのは、「VA(ボルトアンペア)」と「W(ワット)」は同じではないという点です。UPS製品にはVAで表記されているものもありますが、実際に供給できる電力はW(実効出力)で判断します。一般に、WはVAの6〜7割程度が目安とされています。
このように、UPSの出力容量とPCスペックの関係を正しく理解しないまま導入してしまうと、いざという時に役に立たないことになりかねません。使用中の機器の電力要件をしっかり確認し、余裕をもったスペックのUPSを選ぶことが安全な運用につながります。
正弦波と矩形波の違いとは
UPS(無停電電源装置)を選ぶ際、「正弦波」と「矩形波」という2種類の出力波形があることを理解しておくことはとても重要です。この違いは、接続する機器がUPSから受け取る電力の“質”に大きく関係しています。
まず正弦波とは、家庭用のコンセントと同じ滑らかな波形の電力を供給する方式です。電力が安定しており、パソコンをはじめとする多くの精密機器と相性が良いのが特徴です。特に「Active PFC」と呼ばれる省電力技術が搭載された電源ユニットを使っているゲーミングPCでは、正弦波出力のUPSを選ばないと動作に支障をきたす恐れがあります。
一方、矩形波は階段のようなギザギザした波形で電力を供給します。構造がシンプルで製品価格も安いため、導入コストを抑えたい人にとっては魅力的ですが、対応していない機器では起動しない、または誤作動を起こす可能性があります。とくにゲーミングPCのような高性能マシンとは相性が悪いケースがあるため注意が必要です。
このように、UPSの出力波形によって対応できる機器が大きく変わります。ゲーミングPCでの使用を前提にするなら、たとえ価格が多少上がっても、正弦波出力タイプを選ぶことで安心して使い続けることができるでしょう。
ゲーミングPCにおすすめのUPS3選
ゲーミングPCに適したUPSを選ぶ際には、出力容量・出力波形・信頼性の3つを重視する必要があります。以下では、これらの条件を満たしたおすすめモデルを3つご紹介します。
1. APC Smart-UPS 750J(SMT750J)
ラインインタラクティブ方式で、正弦波出力に対応した信頼性の高いモデルです。最大出力500Wと、ゲーミングPCにも十分対応可能なスペックを備えています。また、省エネ設計の「グリーンモード」を搭載しているため、長期使用でも電力コストを抑えられます。
2. オムロン BY50S
小型ながら正弦波出力を備えており、Active PFC対応の電源ユニットにも使用可能です。出力容量は300Wですが、電力消費が比較的抑えられた構成のPCであれば十分にカバーできます。バッテリー交換が可能な点も長期的な運用にはうれしいポイントです。
3. CyberPower CPJ1200
最大720Wの大容量と12個の出力コンセントを備えたモデルで、ゲーミングPCに加えて複数の周辺機器も同時に接続できます。ラインインタラクティブ方式と正弦波出力に対応しており、安定性・拡張性の面でも非常に優秀な選択肢です。
これらのUPSは、ゲーミング環境での使用を想定して設計されたモデルであり、どれも高負荷に強く、停電時のトラブル防止に役立ちます。使用するPCの構成や消費電力に応じて、最適な一台を選ぶことが重要です。
UPS導入と同時にすべきバックアップ習慣
UPSを導入することで突然の停電や電力障害に対する備えは強化されますが、それだけでは万全とは言えません。もしもの時に備えて、日頃からデータのバックアップを行う習慣を取り入れることも同じくらい重要です。
バックアップとは、重要なファイルや設定情報を別の保存先に複製しておく作業です。たとえば、ゲームのセーブデータ、動画編集用ファイル、制作中の資料など、消失すると困るものはすべて対象になります。これを定期的に行っておけば、万が一PCが故障した場合でも復旧が可能になります。
バックアップの方法は主に2つあります。ひとつは外付けHDDやSSDなどの物理デバイスに保存するローカルバックアップ、もうひとつはクラウドストレージサービスを利用するオンラインバックアップです。どちらか一方だけに依存するのではなく、両方を併用することで安全性がより高まります。
また、バックアップは“取ること”よりも“定期的に続けること”が大切です。週に1回や毎月1日など、自分の生活に合った頻度を決めてスケジュール化しておくと、忘れずに実行しやすくなります。自動バックアップ機能を使えば、作業を自分で意識しなくても済むため、特に初心者にはおすすめです。
さらに、バックアップしたデータが正しく復元できるかどうかも、定期的に確認しておくべきポイントです。保存しているだけで安心してしまい、いざという時に復旧できなければ意味がありません。
UPSを導入したことで安心感は増しますが、本来の目的は「データを守ること」です。この目的を達成するためには、UPSとバックアップの両輪で対策することが望ましいのです。
ゲーミングPCにUPSは本当に必要なのか総まとめ
- UPSは停電時に一時的な電力を供給できる装置
- ラインインタラクティブ方式はコストと性能のバランスが良い
- ゲーミングPCは電力消費が大きくUPSとの相性が重要
- 停電時の強制シャットダウンを防ぎデータ破損リスクを軽減
- PvPゲーム中の回線落ちによるペナルティを回避できる
- 雷サージからPCを守る機能がUPSに搭載されていることもある
- UPSには導入コストやバッテリー交換などの注意点がある
- 容量不足だとUPSが正しく動作しないため出力要件を確認すべき
- 正弦波出力のUPSはActive PFC電源搭載PCと相性が良い
- UPS導入と同時に定期的なデータバックアップも欠かせない